フランスにおいて、「日本産ウイスキー(ジャパニーズ・ウイスキー)」の人気は、単なる一過性のブームで終わらず、フランスの食文化の一部として深く根付いています。

スコッチ・ウイスキー市場を俯瞰してみると、フランスは国別輸出量(*)世界2位輸出金額(*)でも世界2位と「質・量ともに安定した世界最大級の市場」だと分かります。

そんな、巨大市場のなかで、日本産ウイスキーは別格の存在感を放っているとなれば、いやぁ鼻高々の気分です。(酒一滴も飲めないのに何言ってんだ。)

同時に「フランスといえば、ワインのお国」といった固定観念を持ち合わせていた私にとって、新しい学びとなりました。

輸出量ランキング(本数ベース)

順位 国名 輸出量(700mlボトル換算) 前年比
1位 インド 1億9,200万本 +14.6%
2位 フランス 1億7,700万本 +1.9%
3位 アメリカ 1億3,200万本 +3.7%
4位 日本 7,400万本 +22.9%
5位 スペイン 5,900万本 +1.9%

(*スコッチ・ウイスキー国別輸出ランキング|2024年度_SWA(スコッチ・ウイスキー協会)のデータを参考に作成)

輸出量ランキング(金額ベース)

順位 国名 輸出金額 前年比
1位 アメリカ 約1,800億円 -0.7%
2位 フランス 約780億円 -11.6%
3位 シンガポール 約580億円 -17.9%
4位 台湾 約550億円 -12.5%
5位 インド 約460億円 +13.8%

(*スコッチ・ウイスキー国別輸出ランキング|2024年度_SWA(スコッチ・ウイスキー協会)のデータを参考に作成)

当記事を意気揚々と書く上で多方調べていくと、日本産ウイスキーは15年以上前からパリでバカ売れしていたんですね。と言うか、フランスだけでなく世界中から認められているんですね(いま今この記事書いているのが恥ずかしくなってきました。)

当記事の要点

①世界有数のスコッチ・ウイスキー大国フランス

  • フランスは「ワインの国」のイメージが強いが、実はスコッチ・ウイスキーの輸出量・金額ともに世界第2位を誇る、世界最大級のウイスキー巨大市場。
  • 伝統的なお酒(ワインやビール)が数ユーロから楽しめる中で、ウイスキーは数倍の値が付くため「質」を重視する嗜好品へとシフトしている。

②日本産ウイスキーの「別格」な立ち位置

  • 価格の特殊性: 日本産(€55〜)は日常的なワインの5〜7本分に相当。お祝いの定番「シャンパン」をも凌ぐ、最高級の工芸品・資産として扱われている。
  • 評価のポイント: 日本独自のブレンデッド技術による「繊細さ」や、日本の清らかな水を使用して製造する背景ストーリーが、美食家フランス人の感性に合致。
  • ステータス性: パリの老舗百貨店で専用棚が設けられるなど、「所有すること自体がステータス」となるブランド力を確立している。

③フランス独自の飲用文化と地域性

  • 飲用シーン: 夕食前の会話を弾ませる「アペリティフ(食前酒)」や、一日の終わりに静かに向き合う「ディジェスティフ(食後酒)」として、生活の一部となっている。
  • 消費エリア: 伝統的に蒸留酒文化が強い北西部ブルターニュや、流行に敏感な都市部パリ・リヨンを中心に、深く広く浸透している。
  • 新たな潮流: 日本産の成功をモデルとした「フレンチ・ウイスキー」も急成長しており、市場全体がさらなる盛り上がりを見せている。

 

フランス国内のアルコール飲料価格表|2025年度

主要アルコール飲料品目の価格表(全販売チャネル)

品目 カテゴリー 価格 備考
ウイスキー(日) ノンエイジ〜12年 €55 〜 €160
¥10,000 〜 ¥30,000
関税0%だが酒税と物流費で日本より高価。
シャンパン(仏) シャンパーニュ地方 €25 〜 €150
¥4,600 〜 ¥28,000
お祝い事や贈答品の定番。有名メゾン品は€40〜が一般的。
ワイン(仏) テーブル〜ミドル €8〜 €35
¥1,500〜 ¥6,500
日常消費用。数ユーロの格安品から数千ユーロの高級品まで幅が広い。
ワイン(輸入品) イタリア・スペイン等 €7 〜 €25
¥1,300〜 ¥4,600
プロセッコやカバが人気。フランス産にないコスパや珍しさで選ばれる。
パスティス(仏) マルセイユ等 €15 〜 €25
¥2,800〜 ¥4,600
南仏の国民的食前酒。水で5〜7倍に割って飲むため、コスパが非常に良い。
シードル(仏) ブルターニュ等 €3 〜 €8
¥550〜 ¥1,500
750mlボトルが主流。低アルコールで、ガレット料理との相性が抜群。
ビール(仏) 地場大手・クラフト €2 〜 €6
¥350〜 ¥1,100
330ml〜500ml。近年クラフト系が急増し、高単価傾向。
ビール(日) アサヒ・キリン等 €3 〜 €6
¥550〜 ¥1,100
専門小売店や日本食レストラン、一部の高級スーパーで流通。
ビール(第3国) ベルギー・ドイツ等 €2 〜 €5
¥350〜 ¥920
定番品。輸入品だがEU圏内のため物流コストが低く安価。

上表を(シャンパンを差し引いて)見ると、日本産ウイスキーの特殊性がよく分かります。

確かに、輸入品のビールやワインは、近隣諸国からの調達で、物流コストをはじめとする流通コストが安く抑えられるため、フランスの地場商品との価格帯的差異が限られています。

別記事で触れますが、酒税と物流費を差し引いて考えても、フランスにおける日本産ウイスキーの価格設定が「日本産 = 高品質・高ステータス」というブランドイメージを強固にしている側面もあるでしょう。

何しろ日本産ウイスキーは、ワイン5本分を払う価値があるわけですから。

日本産ウイスキーの特殊性
  • 「ワイン5本以上分」の価値: フランス人にとって€50以上を出すということは、普段飲み用のワインを5〜7本買うのと同じ出費を意味します。つまり、日本産ウイスキーは「喉を潤す飲み物」ではなく、「じっくりと時間をかけて消費する資産」に近い感覚で購入されています。
  • 外国産ワインとの対比: 外国産ワインが「フランス産より少し安い、あるいは同等」という理由で選ばれることが多いのに対し、日本産ウイスキーは「高くてもここからしか得られない体験がある」という理由で選ばれています。
  • ギフト・コレクション需要: €100(16,000円~)を超える価格帯は、フランスの一般的な家庭では「誕生日」、「昇進祝い」、「クリスマス」などの重要なギフト、あるいは熱心なコレクターの対象となります。
・関連記事: フランスで販売されている酒類の販売チャネルと市場価格を調べてみた。

 

フランス市場における日本産ウイスキーの立ち位置とは?

上述(図)の通り、フランスは「世界最大級のスコッチ・ウイスキー消費国」です。

そんなフランス市場において、日本産ウイスキーは「最高級の工芸品」のような確固たる地位を確立しています。

フランス人も「水」の味に敏感らしく、日本産ウイスキーが「日本の清らかな水」を使って造られているというストーリーが、フランス人の心を掴む一つの要因となっています。

繊細かつ奥深い大人の飲み物

フランス人が好む「エレガントで調和の取れた味わい」が、日本のブレンデッド技術と見事に合致。「スコッチよりも滑らかで飲みやすいが、奥深い」という評価が定着しています。

圧倒的なブランド力

サントリーやニッカといった大手だけでなく、近年は小規模な蒸留所の製品も「希少価値の高い逸品」として熱狂的に迎えられています。パリの高級酒販店や老舗百貨店(ボン・マルシェなど)では、日本産ウイスキー専用の棚が非常に目立つ場所に配置されています。

日本文化への憧憬

「禅」や「ミニマリズム」といった日本独自の美意識が、ボトルのデザインやラベル、そして液体そのものに宿っていると感じられており、所有すること自体がステータスとなっています。

 

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フランス人は、いつウイスキーを飲むのか?

アルコール度数の使い分けをみてみる

度数 品目 シーン
シードル(2〜5%) ランチや軽食、家族での団らん。
ワイン(12〜14%) メインの食事。
ウイスキー(40%以上) 一日の締めくくり、深い社交、瞑想。

食前酒(アペリティフ)文化

フランスには夕食前に軽く飲みながら会話を楽しむ習慣「アペロ(Apéro)」。ここでウイスキーは、ソーダ割り(ハイボール)や少量の水割り、あるいはカクテルベースとして、「胃を活性化させ、会話を弾ませるスイッチ」の役割を果たします。

食後のディジェスティフ(消化酒)

食事の締めくくりに、ストレートやロックでゆっくりと味わうスタイルです。特に日本産ウイスキーは、その複雑な余韻を楽しむために、ディナーの余韻に浸る「瞑想の酒」として好まれます。

家庭でのリラックスタイム

フランスのウイスキー消費の半分以上は「家飲み」と言われており、仕事終わりのリラックスした時間に、お気に入りのグラスで1〜2杯をじっくり楽しむ文化が主流です。

 

フランスのどの地域でよくウイスキーが飲まれているのか?

ウイスキーの消費には、フランス国内でも地域的な傾向があります。

  • 北西部(ブルターニュ、ノルマンディー地方): この地域は、伝統的にワインよりもシードル(リンゴ酒)やビール、蒸留酒の文化が強いエリアです。特にブルターニュ地方は、ケルト文化のルーツを持つことから「フランスのウイスキー造りの聖地」とも呼ばれ、自国でのウイスキー生産も盛んです。

  • 都市部(パリ、リヨンなど): 流行に敏感な層が集まる都市部では、日本産ウイスキーのような「プレミアム・ウイスキー」の消費が集中しています。高級バーや専門店が多く、情報のアップデートも早いため、新しい銘柄への関心が常に高いのが特徴です。

  • 南西部(コニャック周辺): ブランデーの産地として有名ですが、近年のウイスキー人気を受け、コニャックの熟成樽を再利用したウイスキー造りや消費が広がっており、蒸留酒に対する知見が深い人々が多い地域です。

 

フランス産ウイスキーの台頭

実は今、フランス国内でも100以上の蒸留所が稼働しており「フレンチ・ウイスキー」が急成長しているそうです。

日本産の成功をモデルにしており、「ワイン樽での熟成」など、フランスらしいアプローチで日本産と競合・共存し始めています。

当記事の要点(再掲)

①世界有数のスコッチ・ウイスキー大国フランス

  • フランスは「ワインの国」のイメージが強いが、実はスコッチ・ウイスキーの輸出量・金額ともに世界第2位を誇る、世界最大級のウイスキー巨大市場。
  • 伝統的なお酒(ワインやビール)が数ユーロから楽しめる中で、ウイスキーは数倍の値が付くため「質」を重視する嗜好品へとシフトしている。

②日本産ウイスキーの「別格」な立ち位置

  • 価格の特殊性: 日本産(€55〜)は日常的なワインの5〜7本分に相当。お祝いの定番「シャンパン」をも凌ぐ、最高級の工芸品・資産として扱われている。
  • 評価のポイント: 日本独自のブレンデッド技術による「繊細さ」や、日本の清らかな水を使用して製造する背景ストーリーが、美食家フランス人の感性に合致。
  • ステータス性: パリの老舗百貨店で専用棚が設けられるなど、「所有すること自体がステータス」となるブランド力を確立している。

③フランス独自の飲用文化と地域性

  • 飲用シーン: 夕食前の会話を弾ませる「アペリティフ(食前酒)」や、一日の終わりに静かに向き合う「ディジェスティフ(食後酒)」として、生活の一部となっている。
  • 消費エリア: 伝統的に蒸留酒文化が強い北西部ブルターニュや、流行に敏感な都市部パリ・リヨンを中心に、深く広く浸透している。
  • 新たな潮流: 日本産の成功をモデルとした「フレンチ・ウイスキー」も急成長しており、市場全体がさらなる盛り上がりを見せている。

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