あなたは、「ベトナム」と聞いてどんなことをイメージしますか?
食べ物なら、フォーやバインミー…。
リゾートなら、中部沿岸部のダナンが有名どころ…。
民族衣装のアオザイが綺麗で…そういえば日本の服はMADE IN VIETNAMが多くなったような気が…。
最近であれば、2019年2月に第2回米朝首脳会談が開催されたのは、ベトナムの首都ハノイ(Hà Nội)だったな…。
国旗のデザインは…。
と、こんなところでしょうか。
そもそも、ベトナムについてほとんど知らない日本人の方が大多数でしょう。
もしくは、50年前まで戦争をしていた東南アジアの発展途上国の一国と言ったネガティブなイメージを持つ方もいるでしょう…。
当記事を読めば、昨今の東南アジアにおけるベトナムの立ち位置とベトナム経済の将来性を大まかに把握することができます。
あなたのベトナムに対するイメージに、少しでも影響を与えられると幸いです。
注! 当記事は、筆者が何十回と読み返している良書『日本人が誤解している東南アジア近現代史』(著者: 川島 博之氏)を大いに参考にさせていただき、内省を兼ねて、読者のあなたにベトナムをより身近に感じていただくために執筆しております。
本記事は、決して個人的な収益化を目的とした記事ではないことをここにお約束します。
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はじめに: ベトナムってどんな国?
ベトナム社会主義共和国(英: Socialist Republic of Vietnam)は、南シナ海に面したインドシナ半島東部に位置する東南アジアの国です。
国土面積は、331,690㎢。
日本とほぼ同じ国土面積(領海を除いた0.88倍)を有するベトナムは、南北1,650km、東西600kmと南北に長い国です。
北は中国、西はラオス、南西はカンボジア、東と南は南シナ海と接しています。
2020年時点での人口は、約9,734万人。
東南アジア地域の中で、インドネシア、フィリピンに次ぐ3番目に人口が多い国です。
2018年のGDP成長率は、7.1%。
この成長率は、過去10年間の中で最も高い経済成長率で、同時期の世界各国と比較してトップクラスの成長率です。
近年ベトナムは、世界で最も成長率の高い新興市場のひとつとして、世界中からアツい視線を向けられています。
ベトナムが属する東南アジア地域
東南アジアとは、ASEAN(東南アジア諸国連合)加盟10ヶ国と東ティモールの計11ヶ国で構成される地域をさします。
- インドネシア
- カンボジア
- シンガポール
- タイ
- フィリピン
- ブルネイ
- ベトナム
- マレーシア
- ミャンマー
- ラオス
- 東ティモール
東南アジア地域の人口(2020年)
東南アジア地域11ヶ国の総人口は、2020年時点で、およそ6億6,000万人。これは中国の人口(14億人)のおよそ半分に相当します。
ちなみに、EU(欧州連合)の2020年の人口は、4億4,000万人。
下記に、東南アジアの各国の人口、首都、首都人口をまとめています。
東南アジア地域の総人口: 6億6,000万人 | |||
国名 | 人口 | 首都 | 首都人口 |
インドネシア | 2億7,000万 | ジャカルタ | 1,056万 |
カンボジア | 1,672万 | プノンペン | 213万 |
シンガポール | 569万 | – | – |
タイ | 6,980万 | バンコク | 559万 |
フィリピン | 1億960万 | マニラ | 1,348万 |
ブルネイ | 44万 | バンダル・スリ・ブガワン | N/A |
ベトナム | 9,734万 | ハノイ | 810万 |
マレーシア | 3,237万 | クアラルンプール | 177万 |
ミャンマー | 5,441万 | ネーピードー | N/A |
ラオス | 728万 | ビエンチャン | 95万 |
東ティモール | 132万 | ディリ | N/A |
※1. 東南アジアの各国の人口、首都、首都人口をまとめた図表(2020)
※2. シンガポールは首都がないため「-」表記
※3. N/A: データが2020年以前で古いためNot Applicable
- ベトナム人口は、東南アジア地域の中で3番目に多い
- 首都ハノイの人口は、約810万人
(愛知県より約60万人多く、大阪府より70万人少ない) - ベトナムいちの商業都市ホーチミンの人口は、約900万人
(大阪府より約20万人多く、神奈川県より20万人少ない)
参考までに、日本の都道府県人口トップ5を下図に載せておきます。
日本の総人口: 1億2,580万人 | |
人口が多い都道府県 トップ5 | 人口 |
東京都 | 1,400万 |
神奈川県 | 920万 |
大阪府 | 880万 |
愛知県 | 750万 |
埼玉県 | 750万 |
人口を軸に、東南アジアと日本を見比べてみると、今まで持ち合わせていなかった感覚で他国と母国のあらゆる事象を比較できるようになります。
1950年の東南アジアの人口と現在の人口を比べると、約4倍に成長
地域 | 1950年 | 2020年 |
東南アジア地域11ヶ国の総人口 | 1億6,500万 | 6億6,000万 |
今からおよそ70年前の1950年の東南アジアの人口は、約1億6,500万人。決して人口の多い地域ではありませんでした。
しかし、第二次世界大戦が終戦し、東南アジア各国が次々と植民地支配から独立を果たし、政治・経済が安定しつつある昨今、2020年の同地域の人口は約6億6,000万人にまで増加しました。
たった70年間で同地域の人口は、およそ4倍にまで成長しました。
次に、これを踏まえて、東南アジアの国々を支配していた旧宗主国(*2)の1950年代の人口と現在の人口を比較してみましょう。
(*2): イギリス、オランダ、フランス
旧宗主国の人口と東南アジアの人口の比較
地域 | 1950年 | 2020年 |
東南アジア地域11ヶ国の総人口 | 1億6,500万 | 6億6,000万 |
旧宗主国(*3) | 1億200万 | 1億5,000万 |
(*3)旧宗主国: イギリス、オランダ、フランス
先述の通り、過去70年間で、東南アジアの人口はおよそ4倍にまで増加しました。
一方で、旧宗主国3国の人口の推移は、直近の70年間増加することなく、ほとんど横ばいで落ち着いています。
他の地域経済統合体との比較(2020)
地域経済統合体 | ASEAN | EU | NAFTA | MERCOSUR |
加盟国数 | 10ヶ国 | 27ヶ国 | 3ヶ国 | 6ヶ国 |
人口 | 6億6,000万 | 4億4,000万 | 4億9,000万 | 3億600万 |
GDP | 3兆21億USD | 15兆2,000億USD | 23兆6,000億USD | 2兆USD |
1人あたりのGDP | 4,500USD | 34,000USD | 49,600USD | 6,500USD |
※出典: 目で見るASEAN ASEAN経済統計基礎資料(アジア大洋州局地域政策参事官室)を参考に作成
ASEANは、経済規模ではEU・NAFTAを下回りますが、人口では、他3つの地域経済統合体を上回ります。
現在、東南アジア諸国の経済は急速な発展過程にあります。
21世紀後半になれば、東南アジア各国の1人あたりのGDPは旧宗主国と大差ない水準にまで上昇すると言われています。
そうなれば、単純計算で、人口が多い東南アジア諸国の国力は旧宗主国のそれを圧倒するでしょう。
ベトナム経済の将来性を人口から読み解く
昨今のベトナム経済の成長速度は、世界で見てもトップクラスです。
当記事では、下記4点からベトナム経済の将来性について考えてみます。
- GDP成長率
- 1人あたりのGDP
- 人口ピラミッド
- 扶養率
①ベトナムと他5ヶ国のGDP成長率
ベトナムの2018年GDP成長率は7.1%を記録。過去10年間の中で最も高い経済成長率を達成しました。この成長率は、東南アジア圏ではカンボジアに次ぐ高い数値です。
同時期の先進国のGDP成長率と比較すると、ベトナムが今どれだけ勢いのある国なのかが一目で把握できます。
【2008年・2018年・2021年のGDP成長率(前年比)】
国 | 2008年 | 2018年 | 2021年(*4) |
カンボジア | 6.7% | 7.5% | 2.2% |
ベトナム | 5.7% | 7.1% | 2.6% |
中国 | 9.6% | 6.6% | 8.1% |
タイ | 1.7% | 4.2% | 1.6% |
アメリカ | 0.1% | 2.9% | 5.7% |
日本 | -1.2% | 0.8% | 1.6% |
(*4): IMFによる2022年4月時点の推計
※出所: IMFのデータを基に筆者作成
ベトナムの経済成長に関して特筆すべき点は、2008年から今現在まで、継続的に堅調な経済成長を遂げていることです。
- 2008年のGDP成長率: 5.7%
- 2018年のGDP成長率: 7.1%
- 過去5年間(*5)のGDP成長率平均値: 約6.56%
(*5): 2014〜2018年
東南アジアと日本のGDPを比較
国・地域 | 2018年のGDP | 2020年のGDP |
東南アジア | 2兆9,700億USD | 3兆21億USD |
日本 | 4兆9,550億USD | 5兆486億USD |
ちなみに、2018年の東南アジア全体のGDPは2兆9,700億USD。
同年の日本のGDPが4兆9,550億USDなので、東南アジア全体のGDPは日本の約60%に相当します。
2020年、5兆486億USDASEAN加盟国のGDPは3兆21億USD。これは日本のGDP(5兆486億USD)の59%に相当します。
まだまだ大きな経済圏とは呼べませんが、数年内に東南アジア全体のGDPが日本を上回る可能性は非常に高いでしょう。
その根拠は、近年の中国の経済成長の推移にあります。
北京オリンピック(2008年)が開催される2年前、2006年の中国のGDPは日本のGDPのおよそ60%程でした。
2006年から12年経った2018年、中国のGDPは13兆8,900億USDを記録しました。これは、同時期の日本のGDPの2.8倍に相当します。
約10年の期間に、中国は圧倒的な経済成長を遂げました。
中国が辿った経済発展は、現在の東南アジア経済でも発生する確率が高く、このまま順調に成長すれば、数年内に東南アジア全体のGDPが日本を上回る可能性は大いに予想できると言えませんか?
②ベトナムと他5ヶ国の1人あたりのGDP
国 | 2018年の1人あたりのGDP |
アメリカ | 6万3,000USD |
日本 | 3万9,000USD |
中国 | 9,900USD |
タイ | 7,300USD |
ベトナム | 2,500USD |
カンボジア | 1,500USD |
※世界銀行が発信しているデータを参考に作成
2018年のベトナムの1人あたりのGDPは2,500USD。諸説ありますが、開発途上国から中進国になるフェーズにあると言えます。
- ベトナムの2019年の1人あたりのGDP: 2,715USD
- ベトナムの2020年の1人あたりのGDP: 2,786USD
③2021年のベトナムの人口ピラミッド
現在ベトナムは、経済成長に最も適した年齢構成です。
ベトナム戦争(*6)の影響で高齢者が少なく25歳から34歳の年齢層が多い人口構成は、1970年頃〜2000年頃の日本と似ており、経済成長に有利に働くフェーズにあります。
(*6): 1955年11月1日〜1975年4月30日
④扶養率と経済成長の関係性
生産人口(15歳〜64歳)1人が、子供(14歳以下)や老人(65歳以上)を扶養している割合を、「扶養率」と呼び、家族単位で考えてみます。
- 分子: 子供と老人の人数
- 分母: 生産人口
扶養率を計算する上でのケーススタディ | |
15歳以上のカップルが結婚 | 0/2 = 0 |
1人目の子供ができる | 1/2 = 0.5 |
2人目の子供ができる | 2/2 = 1 |
2人の子供が15歳上になる | 0/4 = 0 |
1人の親が65歳を上回る | 1/3 = 0.33 |
2人とも65歳を上回る | 2/2 = 1 |
多くの人を扶養しなければならない国の経済はなかなか成長しません。高齢化が問題になっている日本や子だくさんな社会がこれに該当します。
では、日本を軸に他4ヶ国と比較してみます。
- 1950年: 0.67
- 1960年: 0.56
- 1990年: 0.44(最低水準を記録)
- 2020年: 0.69(失われた20〜30年)
- 2050年: 0.97(予測値)
※1990年扶養率が上昇に転じた年にバブルが崩壊
※扶養者は2010年以降、14歳以下よりも65歳以上の割合が多い
- 1970年: 0.79
- 2010年: 0.36
- 2020年: 0.42
※扶養者は2020年まで14歳以下の割合が多い
- 1970年: 0.81
- 1990年: 0.42
- 2010年: 0.38
- 2020年: 0.40
※扶養者は2020年以降65歳以上の割合が多い
- 1970年: 0.90
- 2010年: 0.39
- 2020年: 0.40
- 2050年: 0.72(予測値)
※扶養者は2030年以降65歳以上の割合が多い
- 1970年: 0.97
- 2010年: 0.43
- 2020年: 0.44
- 2050年: 0.60(予測値)
※扶養者は2040年頃まで14歳以下の割合が多い
アジア圏における高度経済成長は、扶養率が0.5を下回り始める付近で起きる経済現象のようです。
東南アジア各国はいま、高度経済成長期中後期にあたります。
1990年から現在までの日本の経済を把握しておくことが、高齢化社会に入るまでの東南アジアでの私たちの立ち居振舞いに大きな影響を及ぼすと考えられます。
昨今のベトナムの成長産業とは
輸出産業
ベトナムでは、輸出産業に対して優遇政策をおこなっています。
理由は、輸出額がGDPに占める割合が高く、輸出によって稼ぐことを目標にしているためです。
具体的には、国有地を輸出産業のために安く払い下げたり、場合によっては税制上の優遇処置を設けるなどの施作を講じています。
さいごに: 筆者のベトナムでの活躍領域とは
ホーチミン市を拠点に、販売店業・物流業・不動産業を主軸に、カフェ・レストラン・SPA経営などさまざまなビジネスを展開する現地のローカル企業に所属しております。(執筆現在: 勤務5年目)
販売店業
過去10年に渡り、下記の商品をベトナムより輸出入しております。
- 機能性食品(Functional Foods)
- 化粧品、医療機器(Cosmetics, Medical equipment)
- 食品、お菓子(Food, Confectionery)
- 飲料(アルコールも含む) Beverages(alcoholic, non-alcoholic)
- 衣服や靴や生地(Clothes, Shoes, Fabrics)
- 機器、機械(Equipment, Machinery, Spare Parts)
- お肉やお米や小麦粉など農産物 Agricultural Products(Meat, Rice, Flour)
- 海産物(Seafood)
- 家庭用品(Household Goods)
- 家具(Furniture)
- 電子機器やその部品類(Electronic Equipment and Components, Telecommunications)
- 再処理に適した廃棄金属の売買(Scrap Metal Trading)
…など。
物流業
- フォワーダー(乙仲)*
- 日系商品を取り扱う販売店事業
…など。
*通関業者であり輸出入の前後にある空輸・コンテナ輸送・保管まで幅広く対応します。
不動産業
ベトナムいちの商業都市であるホーチミン市を中心に、物件の売買・賃貸をおこなっております。
注! 当記事は、筆者が何十回と読み返している良書『日本人が誤解している東南アジア近現代史』(著者: 川島 博之氏)を大いに参考にさせていただき、内省を兼ねて、読者のあなたにベトナムをより身近に感じていただくために執筆しております。
本記事は、決して個人的な収益化を目的とした記事ではないことを改めてここにお約束します。
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