当記事では、はじめてフランス向けに日本産ウイスキーを輸出する方向けに、実務ステップと税務管理についてまとめます。

関連記事からここまで読み進めてきた方は、当ビジネスにかなり関心をお持ちだと伺えます。

当記事で、具体的なアクションへ落とし込んでいきましょう。

 

事業免許の取得と基本要件

日本産ウイスキーをフランスへ「販売・営業目的」で輸出するにあたり、各事業者が、以下免許・登録を予め行なっておく必要があります。

自身が関与するポイントだけを確実に把握しておけば、お取引できますが、全体像を把握しておけば、より効果的且つ効率的な流通を確立することが可能です。

海外輸出する際に必要な免許・手続き

担当 必要な免許・手続き 備考
日本酒造 酒類製造免許 自社製造商品を商社へ卸すために必要。
日本商社 輸出酒類卸売業免許 輸出専用の卸売免許。管轄の税務署へ申請。
フランス代理店 酒類販売・輸入許可 現地での「Warehousekeeper」登録、アルコール販売許可の取得が必須。

 

輸出入のステップと実務フロー(FOB条件)

貿易条件

貨物 日本産ウイスキー(700ml / アルコール度数 43%)
カートン数 / 本数 100ケース / 1,200本
HSコード 2208.30(ウィスキー類)
輸送方法 LCL(混載便)
貿易条件 FOB
積揚港(POL) 大阪港
荷揚港(POD) ル・アーヴル港

今回の条件であるFOB(Free On Board)に基づき、大阪港で船に積み込むまでの費用・責任を日本側が、それ以降をフランス側が担います。

ステップ1|商品仕様とラベルの確認

フランス(EU)の規制に合わせたラベルへの修正が必要です。

  • 言語: フランス語表記が必須
  • 必須項目: 品名、容量、アルコール度数、輸入業者名と住所、原産国
  • 警告マーク: 妊婦の飲酒注意マーク(フランス特有の必須項目)の表示

ステップ2|書類作成と原産地証明書

日EU・EPA(経済連携協定)を活用することで、現地での関税が免税(0%)になります。

  • 自己証明制度: 現在、日EU・EPAでは商工会議所の発行する証明書ではなく、輸出者がインボイス等に「原産地申告文」を記載する形式が主流
  • HSコード: 2208.30 (ウイスキー/Whisky)

ステップ3|船積み準備(LCL・大阪港)

  • フォワーダーへの依頼: LCL(混載便)のため、大阪港のCFS(貨物集荷場)へ搬入
  • 輸出申告: 税関へ輸出申告を行い、輸出許可証(E/D)を取得

ステップ4|フランス到着・通関(ル・アーヴル港)

  • 税務管理: フランス側の代理店が「EMCS(Excise Movement and Control System)」というEUのシステムを用い、酒税(Excise Duty)の管理を実施

 

LCL輸送の注意点

LCL(混載便)は他の荷物と同じコンテナに入るため、「横転・破損」や「温度変化」のリスクがあります。

梱包の注意点

1,200本(100ケース)であれば、パレット積みにして、シュリンクラップで強固に固定することをお勧めします。

保険について

FOB条件ですが、船積みまでの国内輸送も含めた外航貨物海上保険への加入を商社側で検討が必要です。(と言うかマスト。)

 

税務・コスト管理

フランス側の輸入時には、以下の4つ税金が発生します。

  1. 関税(Tariff)
  2. 酒税(Excise Duty)
  3. 社会保障税(CSS)
  4. 消費税(VAT)

4つの税金

項目 税率・計算式 備考
①関税 0% 日EU・EPA適用時。適用外の場合は、[HSコード: 2208.30]に対して、€0.2/1% vol/hl」程度。
②酒税 €1,936.70 / 純アルコール100L アルコール純分に対して課税。
③社会保障税 €589.46 / 純アルコール100L アルコール25度以上の飲料に課される社会保障税「Social Security Contribution(Vignette)」。
④消費税 20% 20%(商品代金+酒税+社会保障税の合計に対して課税)

実際に、税金計算をシミュレーションしてみます。

税金計算をシミュレーション

別記事で、「フランスへウイスキーを輸出する際の1本あたりの着地コスト」について詳しくシミュレーションしているので、ここでは税金計算のみを簡潔に触れます。

輸入貨物(一例)

  • 貨物: 日本産ウイスキー(700ml / アルコール度数 43%)
  • 計: 1,200本
  • FOB価格: 3,500円/本
  • LCLの海上運賃・保険料: 120,000円

課税価格の算出

  • 商品総額: 4,200,000円(= 3,500円 × 1,200本)
  • 海上運賃・保険料: 120,000円
  • 合計価格: 4,320,000円 / 23,760ユーロ

税金の計算項目

項目 計算式・税率 金額(€ / ¥)
①関税 0% (日EU・EPA適用) €0 / ¥0
②酒税 €1,936.70 / 純アルコール100L €7,003 / ¥1,155,542
③社会保障税(*) €589.46 / 純アルコール100L €2,131 / ¥1,161,435
④消費税 20%(課税価格 + ② + ③) €6,579 / ¥1,208,943
合計(概算納税額) €15,713 / ¥2,887,387

※1円 = 0.0054ユーロ

  • 純アルコール総量: 361.2L(= 0.7L × 1,200本 × 43%)
  • ②酒税の計算式: €7,003(= 3.612[100L単位] × €1,936.70)
  • ③社会保障税(*CSS)の計算式: €2,131(= 3.612[100L単位] × €589.46)

(*CSS): Cotisation de Sécurité Socialeは、アルコール25度以上の飲料に課される社会保障税です。

注意事項|酒税の変動する

フランスの②酒税(Excise Duty)および③社会保障税(CSS)のレートは毎年微調整されます。上記は、最新の標準レートに基づいた概算です。

消費税(VAT)の還付について

フランス現地の代理店(輸入者)が、営業目的で輸入する場合、支払ったVAT(20%)は後日、現地での販売時に相殺・還付を受けることが可能です。

したがって、実質的なコスト負担は「②酒税と③社会保障税がメイン」となります。

致し方ないとは言え「高額な税負担」は、輸入元にとって障壁となり得ますよね。

ここで、検討事項にあがってくるのが、「保税物流」の活用です。

別記事で詳しく解説していますが、保税物流を活用すれば、関税・酒税・社会保障税・VATの「4大コスト」すべてを、販売が決まるまで保留できるため、キャッシュフロー面でのメリットは、非常に大きいと言えます。

より具体的な価格シミュレーション

ここでの税金計算をシミュレーションには、便宜上、フランス国内の経費(通関手続きや国内配送費等)を含んでいません。

より具体的なシミュレーションを知りたい方は、関連記事をご覧ください。

 

別途ケース|個人使用と越境ECについて

①個人使用目的(ギフト等)の場合

  • 数量制限: フランス税関では、個人から個人へのギフトの場合、ウイスキー(40度以上)は1リットルまでが免税範囲です。
  • リスク: 今回のような700mlボトルを複数送る場合、商用とみなされ通関で止まる可能性が非常に高いです。

②越境ECの場合

  • IOSS登録: EU向けのBtoC販売では、IOSS(Import One-Stop Shop)制度を利用することで、150ユーロ以下の商品のVAT徴収を簡素化できます。
  • 配送制限: 郵便局(EMS)や国際宅配便(FedEx, DHL等)を利用しますが、フランスはアルコールの個人輸入規制が厳しいため、事前に配送業者の「酒類配送可否」の確認が必須です。
  • ラベル: 越境ECであっても、現地の言語(フランス語)での内容説明が求められるケースがあります。