当記事では、ベトナムの化粧品市場で、貴社商品を流通させるための、基本規制から参入方法、各種申請事項、諸リスク、そして実務フローに至るまで網羅的にお伝えします。

※執筆時点での最新情報に基づいて、また、ベトナム現地法人に所属し、日々販売店事業に携わっている私の経験値を踏まえながらまとめています。

 

ベトナムの化粧品市場について

昨今の世界全体の化粧品市場規模はどれくらいかご存知でしょうか?

日本市場は、ベトナムはどうでしょう?

項目 ベトナム 日本 世界
市場規模
(2024年度)
約3,000億〜
4,000億円
2.9〜3兆円超 77兆700億円
成長予測 2033年までに、1兆500億円程度まで成長 2030年代までに、6兆円程度まで成長 2033年までに、94兆円程度まで成長
年平均成長率
(25年〜33年)
6.2%程 4.2%程 4.6〜7.1%程
主要カテゴリー スキンケア、ヘアケア、メイクアップ キンケア、ヘアケア、メイクアップ、フレグランス スキンケア、(ヘア)カラー化粧品、ナチュラル&オーガニック化粧品

2024年度の世界全体の化粧品市場規模は、およそ77兆円だったそうです。

日本が3兆円弱。

ベトナムが3,000億円ほど。日本市場のおよそ10分の1です。

一般的見解として、ベトナムの化粧品市場は、近年の経済発展と消費者の価値観の変化、都市に住む人々のライフスタイルの変化とともに、今後も堅調な成長が見込まれています。

日系企業・日系ブランドにとっては、化粧品市場の中でも特に注目を集める「スキンケア・パーソナルケア分野」で市場を開拓できる可能性が高いとされており、ベトナム市場への進出を前向きに検討している企業が増加傾向にあるのではないでしょうか。

 

規制と基本枠組みについて

当市場における規制

さて、ベトナムで外国商品を流通させる場合、ベトナム国内の販売会は、商品を外国から輸入する前に、あらかじめ商品開示手続きを行う必要があります。

化粧品の場合は「登録(registration)」ではなく「通知(notification)」制度を採用しています。ベトナム語だと「công bố sản phẩm mỹ phẩm」

同法令は、ベトナムの保健省がASEAN化粧品評議会のガイドラインをほぼ完全に採用し同国仕様に昇華し制定しています。

つまり、化粧品開示手続き(*/事前通知)が完了し、通知番号(số công bố)が発行されない限り、ベトナム企業は、・販売・広告するどころか、輸入することすら違法なのです。

(*): 以下「化粧品開示手続き」で統一。

Shopee等ベトナム国内の主要ECモール内やローカルのパパママショップでは、依然ハンドキャリー商品が流通していますが、厳密に言えば、違法行為です。

また昨今、「化粧品開示番号の未取得」や「PIF不備」で商品を流通する企業の取り締まりが強化されており、毎月のように、該当企業に対して化粧品開示番号の取り消しや流通停止、当該製品の回収など是正措置が取られています。

基本枠組み

昨年2025年末から現在まで、「化粧品開示手続番号未取得での営業活動」や「PIF不備」、「過大広告」、「禁止成分入りの商品流通」など、摘発が強化されています。

そのため、ベトナム市場で商品を展開する企業は(弊社も例に漏れず)、PIFの準備や品質管理体制の見直し・強化など、ランダムで訪れる不良事象報告体制の整備を早急に進める必要があり、市場全体がかなり神経質になっています。

加えて、ベトナムの製品・商品品質法改正が、2026年7月1日からの施行(2025年6月可決)が予定されています。

化粧品に限らずですが、この改正は、ベトナム市場での事業展開において、製品の品質・安全管理体制を抜本的に見直す機会となるため、今後の動向に注意しつつ速やかで柔軟な対応が求められるでしょう。

2033年までに、1兆500億円程度まで成長を見込まれているベトナムの化粧品市場ですが、今年2026年は、事業者にとって良くも悪くも変化に対応していく年になると想像できます。

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輸出前|化粧品開示手続きについて

先述した通り、化粧品開示手続きは、ベトナム国内の販売会が商品を外国から輸入する前に、あらかじめ行う手続です。

とはいえ、日本企業(ご担当者)様も、当手続きの概要を把握しておく必要があります。

なぜなら、手続きに必要な申請書類のほとんどは、日本国側の製造メーカーや商社が手配するものばかりだからです。(申請書類の詳細等は後述。)

手続申請先

申請先(省) ベトナム保健省
(MOH: Ministry of Health)
申請先(局) 医薬管理局
(DAV: Drug Administration of Vietnam)
Webサイト 保健省医薬管理局

主管当局は、ベトナム保健省傘下の医薬品管理局です。

主要な3つの法令

  1. 化粧品管理に関する基本通達[Circular 06/2011/TT-BYT]およびその改正[29/2020/TT-BYT、34/2025/TT-BYTなど統合版]
  2. ASEAN化粧品評議会(ASEAN Cosmetic Directive)のガイドライン準拠
  3. 2026年7月1日施行予定の新政令(*/Draft Decree on Cosmetics Management)

(*)新政令: 2025年9月頃に正式承認されたとみられ、通知制度、GMP、PIF、ラベル、広告、不良事象報告などが大幅に強化・明確化される見込み。

現行制度の下では「通知」ですが、新政令では、「製造所CGMP-ASEANの厳格化」、「PIF常時準備義務」、「広告の禁止表現厳格化」などが予想されています。

申請に必要な書類・費用・期間

書類一覧表

書類 言語 備考
申請書 ベトナム語 オンライン様式。
委任状 英語+ベトナム語訳 公証・領事認証が必須。
成分表 INCI名 禁止成分・制限成分の有無を要確認。
表示ラベル案 ベトナム語+英語可 現行の必須項目は、別記事をご覧下さい。
製品情報ファイル 英語可(一部ベトナム語推奨) 化粧品の品質・安全性・効果を証明するための詳細な情報または書類をまとめたファイル。現行の必須書類・情報は、別記事をご覧下さい。
自由販売証明書 英語+ベトナム語訳 化粧品に関しては、CPTPP加盟国である日本からの輸入時は提出が免除されている。
(GMP証明) 不明(おそらく日本語または英語の原本をベトナム語翻訳) 現行は必須ではないが新政令で強化される予定。(PIFの一部資料として提出を求められる。)
  • 申請書: Prescribed Form
  • 委任状: POA|Power of Attorney / LOA|Letter of Authorization
  • 自由販売証明書: CFS|Free Sale Certificate
  • 製品情報ファイル: PIF|Product Information File
よくあるご質問
「自由販売証明書を発行してください」とベトナム企業から依頼がありました。

日本の化粧品をベトナムへ流通させる場合、自由販売証明書(CFS: Free Sale Certificate)の提出は、CPTPP(環太平洋・パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定)加入国である日本からの輸入では、例外的にCFSの提出が免除されています。提出義務がない旨を伝えましょう。(*当記事執筆時点)

・参考記事: CPTPPにより化粧品の自由販売証明書が不要に|日本貿易振興機構(JETRO)

手数料

公式手数料は、約500,000VND(約21USドル)/1SKU。

成分が同一の場合に限り、「色違い」、「容量違い(500ml / 1000mlなど)」化粧品開示手続きを1SKU分として、まとめられる場合があります。

私が所属するベトナム法人も、クレンジングオイルや化粧品の容量違いを1SKU分として化粧品開示書受領番号を取得した経験が有ります。

※弊社の場合ですが、直接当局へ申請せず、エージェントを利用しています。(費用感: 公式手数料の約6倍)

所要期間

審査期間: 通常1〜3ヶ月

ただし、下記ケースが発生すると、想定していたスケジュールより大幅に時間を要する場合があります。

  • 提出書類に不備があった場合
  • 追加提出の要請を受けた場合
  • 保健省医薬管理局のサイトがダウンした場合(年数回)

※弊社が当事業を始めた、2022年から執筆時点までの状況

通知番号の有効期間

化粧品開示書受領番号の有効期限: 5年間

期限が来ると「再取得(再度ゼロから申請)」する必要があります。

 

化粧品市場への主な参入・流通方法

方法 特徴
①現地法人設立 + 直販 100%外資可能(WTOコミットメント)。資本金、人員要件等高め。
②現地正規代理店・販売店と契約 最も一般的。日本メーカーの9割以上がこの形態。
③現地合弁会社設立 本格的に市場参入する場合、コントロールを維持したい場合に有効。
④EC販売(Shopee/Lazada等) 現地EC販売業者と提携して商品を流通する場合も、パートナー企業がベトナム国内で通知取得する必要がある。他3つの方法と比べ、現地企業の法令遵守という観点からリスク有り。

最も現実的な参入方法とは?

当記事をご覧いただいている企業(ご担当者様)の業態・規模にもよりますが、普段ベトナムで実務に携わる私個人の意見としては、②目星をつけた現地法人と販売契約を結ぶことでベトナム市場への進出の足掛かりとする方法が、最も現実的な流通ルートだと思います。

信頼できるベトナムの現地法人と代理店契約を結び、上手く稼働できれば、本社経営陣からの進出決定が下る前からベトナム市場の動向や実務、実績を積むことができます。

 

輸出後・流通前|必要な手続き

裏面表示の要件確認と貼付

ベトナムで化粧品販売する際に必須の裏面ラベル
実務(担当)者 ベトナム国内で流通させる販売店(企業)

ベトナム国内で外国から輸入した商品を流通させる場合、化粧品に限らず全ての商品にラベルを貼付する必要があります。

ベトナムの販売店が、裏面ラベルを作成するにあたって、各商品の裏面情報などを英語で説明またはデータ共有を依頼されることがあります。

上述した化粧品開示手続時に当情報は必要になるので、特に問題なく対応できると思います。

PIFの作成・保管

ベトナム化粧品製品情報ファイルのアイキャッチ画像
実務(担当)者 ベトナム国内で流通させる販売店(企業)

当書類ファイルも、ベトナムの販売店が取り扱う化粧品に関する詳細情報を、ベトナム保健省医薬品管理局が策定したガイドラインに則って作成した書類を指します。

2025年11月以降、摘発強化されており、弊社も例に漏れず、ベトナムの販売店事業者はかなり神経質になっています。

実際、毎月のように、該当企業に対して化粧品開示番号の取り消しや流通停止、当該製品の回収など是正措置が取られています。

これからベトナム市場へ参入を検討されているなら、現地の法律事務所や提携しているコンサルティング企業に加え、現地でのヒアリングは必至です。

TCCSの作成・保管

ベトナムTSSC
実務(担当)者 ベトナム国内で流通させる販売店(企業)

化粧品から少し話はそれます。

日用品カテゴリーの商品をベトナム国内で流通する際にも、予め手続きが必要です。

販売店がベトナムのローカル規格に沿って、該当商品に適した基礎基準を企業内で任意で発行します。

 

主要なリスクと注意点

リスク項目 内容 罰則・影響
通知未取得販売 偽造書類を作成・利用した最も多い違反 商品没収+罰金(数千万〜億VND)+6ヶ月〜永久受理停止
PIF未保有・不完全 2025年11月以降摘発強化中 6ヶ月受理停止(日本ブランド複数社で実例)+調査
虚偽・過剰広告 「シワ改善」「ニキビ治療」「100%」など 広告停止+罰金+通知取消リスク
禁止・制限成分混入 水銀、ハイドロキノンなど 即時リコール+刑事責任もあり得る
ラベル不備 2026年以降非準拠ラベル完全禁止 通関拒否+販売停止
現地パートナー不適切 通知番号を他社に転用、連絡不通 自社製品が販売停止・回収対象に
新政令対応遅れ 2026年7月施行でGMP・PIF・不良事象報告強化 2026年後半に大量失効・再申請ラッシュ予想

2025-2026年実態ベースを元に作成

度々お伝えしていますが、近年「化粧品開示番号の未取得」や「PIF不備」で商品を流通する企業の取り締まりが強化されています。

とりわけ、「PIF不備」による6ヶ月受理停止処分が、日本ブランド(商品)でも複数発生しています。該当企業だけでなく、場合によっては、商品自体のベトナムへの流通に制限がかかることもあります。

お取引を行う現地販売店への明確な選定基準を持つことも然り、取引していくなかでの信頼関係が構築できるかどうか、両社の担当者との相性はどうかなど、取引を開始してからの方がより慎重かつ毅然とした主張や方針を伝え続けることが大切です。(だと痛烈に感じています。)

自社商品を取り扱うならまだしも、商社のように製造会社からの依頼で、販路拡大の一環で海外展開を請け負っている会社ならより、事業計画や慎重なアプローチを求められますから..。

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実務アドバイス

「信頼できる現地パートナーを選び抜きましょう。」

この一言に尽きると思います。

…言い切ったものの、ざっくりしすぎていますね。すいません。

信頼できる現地パートナー像について考えてみる

①実績・経験面

ベトナム化粧品市場で実績がある現地法人。

つまり、日本企業(製造会社あるいは商社)との取引を行っており、化粧品開示手続きやPIF、広告申請などを正しく行なった上で、現在も活動しているベトナムの会社。

やはり、実績のある会社と提携できれば、参入後、最優先事項である「市場での販促」に注力できます。

提携企業先が販路を持っている(=イコール)新規商品の化粧品開示手続きから広告申請、その他諸申請までスムーズに対応してくれます。

(※昨今、毎月のように摘発されているものの、偽造書類を作成・使用している規範意識が欠如した会社も依然として存在するので注意が必要ですが。)

②財務力面

現地の販売店と契約(業務提携)することでベトナム市場への参入を検討されているなら、予め取引先の財務情報を把握しておくことも必須です。

構造的には、現地小売店や2次卸との取引は、貴社が契約する業務提携先の会社が契約主となります。

ベトナム市場における弊社機能を表す概要図事例_弊社の場合: ピンク枠: 日本商社ハンドリング / 紺色枠: 弊社ハンドリング

したがって、業務提携先の会社の都合や考え方・方針の違いで、ここぞというタイミングで仕入れを行ってもらえなかったり、商品の販促(プロモーション,割引等)への理解・協力が得られず、ベトナム国内へ流通はできたものの、思うように販促までコントロールできないケースがあります。(恥ずかしい限りですが、弊社もこの状態)

③コミュニケーション面

突き詰めると、提携先企業とどれだけ建設的に事業プランを話し合えるか、双方の立場を踏まえて、どこで落とし所を見つけて先へ進めるかだと思います。

長期的な信頼醸成を図れない取引先との溝を埋める努力よりも、数社と取引をしつつ市場を見極めていく方が理に適っているでしょう。

参入する市場は、日本市場ではありません。

日系他社商品だけでなく、欧州や韓国、中国、そして地場企業の数多のブランド・商品が鎬を削る海外ベトナム市場です。

相互理解・相互協力ができる堅実なパートナー企業が見つかれば、勝負してみる価値は十分あると思います。

その他の実務について

PIF作成・保管

2025年11月以降、摘発強化されている「PIF」の提示要請。

最初からコンサルティング会社や専門会社、法律事務所などに作成を依頼するのも一つの対応策でしょう。

裏面表示の規則確認

流通前に、現地の販売店事業者によって、商品の裏面に貼り付けます。

こちらも、言語(基本ベトナム語)や記載必須事項、表示方法など、現地の法律事務所や専門会社に確認を取れる体制を整えておきましょう。

広告申請・表現規則の確認

こちらも、禁止ワードのリスト化やPOP作成時の規則など、現地の法律事務所や専門会社に確認を取れる体制を整えておきましょう。

新政令への対応

2026年7月施行の新政令だけでなく、最新の摘発事例など常に最新の市場情報をキャッチアップできる体制を整えておくことは事業の生命線とも言えます。

当業界の政令だけでなく、電子インボイスに関する政令が新たに義務化(2025年)されたりと、事業全体に関わる政令や情報が集まり蓄積していけるチームづくりが必至です。

 

さいごに

ここまでご一読いただきましたが、いかがでしょうか。

良くも悪くも、あなたの「ベトナムでの化粧品販売事業の解像度」が上がったのなら、執筆冥利に尽きます。

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ベトナム側の販売店事業に日々携わっている私が、現地の最新事情と、弊社の知見・経験をもとに、偏りのない率直な見解をお伝えします。

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